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§ 継承のチエ(下) ─ 事業、資産、家族文化をどう伝えるか

オーナーシップ ─ 持ち株をどうする

適切な後継者が見つからない、後継者に断られるなどで今後は「経営は最適と思われる他人」に任せる場合が増えてくるのではないだろうか。その際持ち株は維持し、オーナーとして影響力を行使するという選択もあれば株式売却という道もある。M&Aを考えるにせよMBO、ファンドへの売却と選択肢は広がってきている。

事業承継を含め、引き続きオーナーシップを維持する場合も、種類株、黄金株、個人信託の利用など、ツールが増えてきた。遺留分問題も含め、オーナーシップを維持しつつ個別のニーズを満たす柔軟な対策を専門家に相談されることをお勧めする。会社の支配権を一人に集中させつつ、「兄弟に公平に資産を分けたい」と願う親としての気持ちにも応えていけようか。

相続を切り抜けるチエ

相続を機に家族がもめるケースは多い。ファミリー間の確執はファミリー企業においては命取りにさえなる。財産の分配に当たっては、生前贈与、特別な支出分、老後の面倒などの諸事情を考慮した分配方法を予め相続人全員に説明した方がよい。更に言えば、日ごろから家族や一族の意見調整の場、不満なことをオープンに話し合う場を作っておく事が望まれる。欧米のアドバイザーはファミリー企業に関係する(株主としても含め)全員からなるファミリー会議・理事会・評議会など、ファミリーガバナンスのための機構作りを勧める。
家族間でも当然利害は異なる。例えばファミリー企業で働いている場合、自身株主であっても、「配当よりは会社の発展のための投資により多くの資金を回したい」、「ボーナスで役員のインセンティブを高めたい」と願うかもしれない。他方、そうではない家族は会社の情報も伝わりにくく、なんとなく疎外感を抱きがちになる。そして「利益はより多く配当に」回して欲しい。

家族会議の場などでこうした意見や利害を率直に議論しあってこそ、相互信頼は培かわれる。また、こういう場で家族が言い出しにくい問題、「生命保険に入ってほしい」、「どのくらい資産がある」、「何時引退する」等も議題としたい。第三者を交えることで、親もはっきり自分の方針を伝え、却って親の経営者としての悩みを理解して貰えたりする。

家族文化を伝える

家族間のコミュニケーション、意見調整の場をもうけることと同時に、より積極的に家族の連帯を作る努力、親や先祖から受け継がれてきた価値観,そうした家族文化をしっかり子供に伝える努力をしたい。
家族ニュースレターの発行はメールを使えば簡単。アルバムや家族史の編纂など、それが家族文化を育て、家族のアイデンティティを確立し、次世代に繋げていく機会となろう。そして遺言の作成にあたっては、「資産の配分」に先立って「あなたのような子供を持てて良かった」など子供への想いを伝えよう。そして自分の信条を書き残そう。こうした積み重ねが子供を支え、ひいては事業や資産継承のキーポイントとなるのではないか。

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(大阪商工会議所機関紙『大商ニュース』、2007年7月10日号に掲載)
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