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§ 継承のチエ(上) ─ 事業、資産、家族文化をどう伝えるか

日本の大多数の会社はオーナー一族が支配或いは経営する、いわゆるファミリー企業である。世界的な企業から町の八百屋さんまで様々であるが、意外に同族経営の共通点は多い。

これら企業にとって後継者問題はその存亡をかけた一大関心事である。同族が事業継承を行わない場合でも資産継承という大問題がある。
「子供に自分の想い,チエそして家族文化を伝える」ことは親としての務めなのだが、実は、同時に円滑な事業・資産継承にとってカギであると確信している。以下、ファミリー企業における継承の問題、どう事業、お金、チエや文化を継いでいけばよいか検討しよう。

ファミリービジネスの研究

日本と異なり、欧米ではファミリー企業の研究が非常に盛んで、多くの幅広い研究結果が披露、実践されている。ここではファミリー企業の重要要素である「事業―経営」「資産―オーナーシップ」「家族」の3つの側面から考えてみたい。

先ず、この3つの側面は往々にして矛盾をきたすと云うことに対する認識が必要である。ビジネスでは結果を出さなければならず、効率が問われる。しかし、その論理を愛情だとか「全てを受けいれる」家族の領域に持ち込んだら問題となる。
オーナー個人の資産の最大化は、必ずしもビジネスにとってはベストではなく、「企業の私物化」は命とりとなる。

継承の場合もしかりで、この矛盾を抱える事業・資産・家族夫々の側面を考慮した検討が必要なのである。

事業継承―幼少時よりの刷り込み

ファミリー企業のメリットはなんといっても早くから後継者教育が出来ることにある。候補者群に対して幼少時より「仕事の話」をし「ファミリー企業の歴史や家訓」を植え込んでいく。出張に連れて行き、小遣い稼ぎに自分の会社で働かせる。
こうした経験は子供にサバイバル術を教え、他の職業に就く場合であろうとまたとない職業教育になる。会社を継ぐような場合は、入社時にもう企業文化の体現者であるということは大きなメリットになろう。1901年創業のオーナー一族のケースでは忙しい親に代わって祖父がこの役割を担っている。

専門家は「どういう条件の人を継承者にするか、後継者選考が具体化する前に予め定めておくことが大切だ」と力説する。醜い後継者争いを避けるためである。候補者が入社するにあたり「現社長と話しあい、どういう気持ちで会社に入る、どういう状況になったら辞める、或いは辞めさせるなど、予め話し合って文書化しておくほうがいい」などは貴重なアドバイスである。少子化のおり「候補者」は潤沢にいるわけではない。しかしファミリー企業の凋落の一大原因は能力のない経営者を据えてしまうこと。資産はともかく事業の継承者を子供、身内に限定してしまうと悲劇を迎えかねない。

次回は継承における他の二つの側面、「資産―オーナーシップ」と「家族」について考える。

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(大阪商工会議所機関紙『大商ニュース』、2007年6月10日号に掲載)
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