【 終結のノウハウ 】 2003年05月24日掲載
昨今は創業が喧伝されており、会社設立のノウハウ本は所狭しと本屋に並んでいる。確かに起業は至難の技だが、会社を清算することも大仕事だ。こじれがちな人事整理には勇気もいる。人格も問われる。タイミングを計る決断力もいる。だがこうしたノウハウを記した本はあまりみあたらない。
会社の清算ほどドラマチックではないが投資に関してもしかりである。投資を勧める際はあれこれ数字を挙げて喋り捲るセールスマンも、解約のアドバイスとなると頓とさっぱりである。折角よい投資をしても「儲かっていますから、他のに乗り換えましょう」と要らぬお世話の電話が掛かってくるのが精精だ。投資をする時にはどういう状況になったら解約するか、予め心づもりをしておくことも大切だ。投資をやめるに際してのノウハウがもっと欲しい。
考えてみれば退却とか終結のノウハウ不足はなにも経済活動に限ったことではない。別れ、離婚、失業どれをとってももっと研究され、そのノウハウがの提供があってもよいよいのではないか。何事も始めるときは勢いもあるし、楽しい。いろいろ世話を焼いてくれる人もいればノウハウ本もある。だがやめる時、退くときはどうだろうか。事情が複雑で周囲のサポートは期待できないかもしれない。後ろ向きの話であるが故に、エネルギーの消耗はより激しい。心の傷の手当てもいる。先人の教えや経験談、そして調査研究から来る「知識や知恵」で武装したい。そうすれば辛い経験も前向きに捉えられるのではないか。
これは人生の終結である「死」についてもいえよう。無論自分はどんな死に方をしたいか、どんな人生の終わり方をしたいかはっきり決めたとしたって、その通りになるものではない。しかし私は死生観を持つほうが充実した生き方ができるように思う。自分の葬式のときどんな弔辞を読んで貰いたいか、それを自分で書いてそのとおり生きようと提唱する人もいる。終わり方を考えた方が見極めがつくということであろうか。
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