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欧米資産家に学ぶ二世教育

§ 第95回 同族経営でのコミュニケーショントラブル



ファミリービジネスにおいて、多くのトラブルが親子あるいは兄弟間などの人間関係から発生している。
経営方針に関する意見対立に端を発したトラブルの場合でも、家族間・親族間の問題が複雑に絡んでしまう。
些細なコミュニケーション上の行き違いに発した軋轢でも、自分の育てられ方に不満があったりすると思わぬ展開をみせてしまう。

異なる利害、異なる意見、気にくわない人の存在は避けがたい。
それを調整していく手段がコミュニケーションである。そのやり方は時代とともに変化する

企業においてもかつての「トップダウン」という一方通行の意思伝達よりは、共感を得る「双方向」の対話型が、 動きの激しい、多様化したニーズに対応せねばならない時代においてははより必要とされる。
シニアにとってはなかなかのチャレンジであるが、上手に対応している経営者もいる。

ところがである。社内コミュニケーションにはかなり神経を使い上手に対応している社長が、 対家族では途端にコミュニケーション下手になってしまうケースが多々ある。
「話さなくても分かってもらえるだろう」という甘えがあるのか、日本人に多い気恥ずかしさのためか。
同族経営では、家族間、親族間のよいコミュニケーションが緊要となる。
家族間の問題は全員が納得していないとそのつけは後で回ってくる

ファミリービジネスにおいて社長交代は企業の存亡にかかわる大問題である。特に創業者やカリスマ性のある社長の後が大変だ。
「会社はおまえにまかせる」といいながら、自分の部屋は渡さず、毎日会社に出てきてアレコレ言う。
有能な後継者が「新しい時代にあった新しいやり方を」と意気込んでも、社員は前社長に気をつかってどちらを向いていいかわからなくなる。

会社を任せたら、ともかく一旦は社会活動に邁進するとか、半年ゆっくりクルージングを楽しむとかして区切りをつけてほしい
自叙伝執筆を始める人もいるが、「自分の成功体験が思い出され、ついつい口をはさんでしまうからよくない」とある相続の専門家は言う。

キーポイントはコミュニケーションスキルのように思われる。
欧米資産家はまだ幼いうちからコミュニケーションスキルを学ばせるため、家族会議を定期的に持ち、小遣いの使い方について討議したり、子どもからの要求を聞く場を設ける。

廉価に作れる家族財団も活用する。子どもを役員にして、説明能力、コミュニケーション能力、リーダーシップを身につけさせる場とする。
同じ趣味を持つことを促し、結婚後も家族旅行や家族の行事に心を配る。
こうした家族間のコミュニケーションの機会を持つ努力をすることが、家族文化の継承に、また後々のファミリービジネス継承、相続時に役立っていくのである。


(日本経営合理化協会日本経営合理化協会BOOK&CD・DVD Webサイト・ 『経営コラム・社長のネット情報局』に掲載)
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