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欧米資産家に学ぶ二世教育
§ 第85回 撤退のノウハウ
戦後70年の節目にあたり太平洋戦争の話題がよく出る。
その一つが「なぜあんなひどい状況になるまで降伏出来なかったか」という点である。
「負ける」などゆめ口にできない状況、最後まで勝てると信じていれば神風が吹く、といったあまり根拠のない精神論もあっただろう。
しかし、日本は外国との戦争の経験が少なく、負けるノウハウ、撤退のノウハウが乏しかったのが大きな要因ではなかったかと思う。
ヨーロッパを見渡せば、ほぼ全ての国が古代より戦争を繰り返し、勝ったり負けたりしている。
断続的とはいえ英仏には100年戦争の歴史だってある。
戦争を戦っている最中でも、金持ちの領主を捕虜にすると、莫大な身代金を払わせて釈放したとか、
金を集められなかった人は一度本国に返し、本人に身代金を集めさせたとかいう逸話を聞いた。
ソ連に抑留された元衆議院議員の相沢英之氏は、日本人に比べドイツ人がいかに「負け慣れ」しているのかを
感じ、それはロシア人との交渉態度にも現れていたと述べた。
何事も「始める時より引き際」がむずかしい。
頑張っても見通しが立たない場合、再起不能になる前に、負けを宣言し、なるべく傷を少なく撤退する事は、戦争だけでなく、
ビジネスにおいても緊要だ。
知り合いの中国人から「こんなビジネスを始めた」と知らせを受け取った。ところが数年もたたないうちに
「あれは撤退して今度はこのビジネスだ」という。身のこなしが実に軽い。
彼等は始めるときから「どういう状況になったら撤退するか」決めてから始めているのだろうか?
法制度の違いもあるのだろうが、「・・・一筋50年」といったセリフが好きな日本人には中々まねができない。
しかし経営コンサルタントの神田昌典氏は「大成功する人に共通するのは、引き際がうまいこと」と述べている。
事業の撤退、特に長年続けた企業をたたむという段になると経営者は大いに悩む。
事業が時代に合わなくなった、後継者がいない等理由は様々だが、「先祖に申し訳ない」となかなか決断できない。
しかし、別の業態にする、資産管理会社にするなどしても、先祖の想いをつなげていくことは出来るのではないだろうか。
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