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欧米資産家に学ぶ二世教育
§ 第8回 親側の教育−リタイアは歓喜
男性の友人に「引退しないの」と聞いたら「まだそんな年じゃない」「落ちぶれるには早い」と心外げだった。どうも日本では何故か引退に否定的なイメージを重ねてしまうようだ。「こんなに早く引退できて羨ましいダロー」と胸を張る人は余り見かけない。
アメリカ人の場合は、早くリタイアして生活をエンジョイするのがステイタスにさえなっており、実際50代、時に40代でリタイアして趣味の追求、自分の好きなライフスタイルをエンジョイしているのをよく見かける。そこには「落ちぶれ」印象は全くない。
ヨーロッパの人にいたってはそもそも遊ぶために働いている向きがある。スペイン語では退職を「歓喜」を意味する言葉で表現するそうだ。自分の大好きな自然や人々に囲まれての生活、イタリアで美術三昧の生活をしているのを見ると本当に羨ましくなる。60歳から64歳の労働力率、日本56%(男性では73%)であるのに対し、フランスでは16%、60歳以上の人に「何歳まで仕事をするのがよいか」と訊ねたところ、33%が「元気ならいつまでも」と答えるのが日本人。どうしてこうまで違うのだろう。
年金問題、介護の心配など老後生活の不安が強いということはあるにしろ、経営者で生活の心配がない人でも「働く意欲」は高いようである。仕事が何よりの生きがいで楽しいという人、趣味などを育ててきておらず仕事をするしか能がないという人もいよう。また男性の場合は、「仕事」が社会的存在としてのアイデンティティ、家庭内での地位の確保に欠かせないのだという人だっている。
「まだまだ十分会社経営をやっていける自信はあるけれど、世界中を旅行したり、じっくり本を読んだり、仏教の勉強をする、そんな経験をしないで死ぬのは嫌だ」といって63歳でリタイアの道を選んだ友人T氏がいる。彼は2-3年かけて引退後どんな生活をおくるか、「シナリオ作り」をしていた。その彼の最優先事項が「心の赴くままに生きる」という贅沢。
何らかの理由で働き続けるにせよ、ワークライフバランスを大幅に変えて、「そもそも自分は何故生まれてきたのだろう」「自分には何か託された使命があるのだろうか」、を今一度じっくり考える時間を作り、それを今後の人生、セカンドライフに活かしていきたいものである。そして目的めがけて猪突猛進だった人生の次に「その場を楽しむ、その瞬間を生ききる」 ─そんな生き方を経験してみたい。
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