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欧米資産家に学ぶ二世教育
§ 第18回 一族という意識
世界のファミリー企業(同族経営)に関する会議に出席してよく耳にするのが、一族とか、家長とかいう言葉である。
色々お会いした世界のファミリー企業はどうも日本と比べて自分たちをファミリーというよりは一族で捉えている場合が多いように思える。
実際そうした会議も親子のみならず、一族のメンバーが一緒に出席しているケースが多く、聞けばかなりの人数がファミリー企業に加わっているという。
米国のファミリー企業(同族経営)の代表格としてよく挙げられるレアード・ノートン社などはその典型例である。
互いに親戚であるレアード家とノートン家の祖先がミネソタ州で製材会社を始めたのが1855年。
その後本社はシアトルに移転、業態も変え、現在は北西太平洋地区最大の資産運用会社であり、傘下に多くの企業を有する。
日本人にとって大変興味をそそられるのは、一族380名にものぼるこの2家系をどう纏め、躍動感溢れる企業として運営しているかという点である。
一族のうち130人は何らかの形で会社に関わっていると聞くと「さぞかし大変だろうナ」と思ってしまう。
レアード・ノートン社の会長自身から話を伺う機会があった。彼は創業者から数えて5世代目にあたる。
「どうして家族が喧嘩したりバラバラにならないのか?」と質問した。「ファミリーの決定事項の一つが“ファミリー結束の誓い”だからね」
毎年の株主総会は圧巻だ。レアード・ノートン一族14歳以上のファミリー株主が出席し、ビジネスミーティングだけでなく、同時に開催される種々のイベント、
子供プログラム、スポーツ大会、講演会、ティーンのプログラムなどまことに多彩である。
経営や慈善トレーニングに資するだけでなく、一族の価値観を共有し、世代間、家族間のコミュニケーションを図るのに役立つ。
昨年は105人の従兄弟たちがキャンプに参加した由。だから大人になっても親密な付き合いが保てるそうだ。
驚いたのは「今研究しているのがインディアンの組織」という彼のコメント。アメリカインディアンの部族は何名位で構成されていたのか知らないが、
意思決定方法、どう部族の結集を図ってきたか等が一族を統率していく参考になるということだろう。
たしかに400名ちかい一族ともなれば、「一族」というより「部族」に近い。
少子化のおり、後継者の候補を一族にまで拡大すればそこにはより多くの人材がいるはずだ。
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