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ロータリー運動と女性会員 ─ 講演内容 ─

 皆さん、こんにちは。

 はなはだ僭越なのですが、こういう場を頂きましたので、日ごろ私なりにロータリーについて思っていること、直裁に申しあげさせて頂きます。まず私がいただきました演題のテーマについて第一に申しあげたいのは、ロータリーの歴史が始まったのが1905年で、女性の入会をRIが認めたのが1989年の規程審議会においてであり、100年のロータリーの歴史中で15年ほど前という事実です。やはりこの点を心にとめて余り焦らない、長い歴史の中で女性入会促進をとらえていくべきではないかと思います。
 厳しいようですけれども、1964年位から世界各地区より「女性を入れるべき」という提案がされたにもかかわらず、RI内部でこの問題を解決することができなかったという事実も指摘したいと思います。ロータリーの時代の変化への対応力の評価が必要かもしれません。当時の女性入会賛成派の主張は1)男女同じ機会が与えられるべきという原則論 2)ロータリーというのは職業の代表で構成される、圧倒的に女性が多い職業の場合は女性が入って当然じゃないか、等が主たるものでした。
 それに対し反対派は男だけの気楽な親睦が図りたい、配偶者に対する配慮などで、これらの理由は現在の日本でもよく耳にします。日本第1号の女性ロータリアンは、規程審議会がOKを出した1989年7月、北海道清水町のNTTの営業所所長さんでした。
 皆様はどういうお考えでしょうか。私は個人的には日本は米国と法律も違いますし、女性を入れるかどうかはそれぞれのクラブが決めてもいいのではないかと思っております。今の社会の情勢を考えると、会社であれ、行政であれ、ヒエラルキー的に上からの命令で同じ行動をとるというよりは、地域密着型、現場主義、あるいは個別主義で物事を決めたほうが力が出る時代に変わってきていると思うのです。「自分のところはこうだ」と個別に決めていくのが今の時代の動きではないでしょうか。更にこれもはなはだしく個人的な意見なのですが、ロータリーで現在増強が行われない、あるいは退会者が多いということは、大きく変化した現代におけるロータリー運動の見直しそのものが問われているのではないか、という気がするのです。残すべきものは残すが、時代のニーズに対応した運動、クラブ、あるいは自分自身とロータリーのかかわり方を考えていかなくてはならないのではないかと思います。

 ロータリーの目的として「奉仕と親睦」が2つの大きな柱だと私は教えられたのですが、英語で書かれたロータリー関連のものを読みますと、ほとんどが奉仕で、親睦も、奉仕のための親睦という印象を受けます。ロータリーの職業奉仕の精神がほかの奉仕団体と比べたときのロータリーの一大特長であると教わりました。私は職業奉仕を全面に掲げるのは実に素晴らしい事だと思います。バブル時代を振り返り、自分が本当に良心的に、自分の専門知識を生かして仕事をやることがいかに大変で勇気がいり、それだからこそ最も効果的に社会に貢献できるのだと実感しております。 それに、自分の専門知識で、例えば歯医者さんだったら歯の無料奉仕を老人ホームでおこなうなどは最も意義のある奉仕だと思います。ただ、このごろのRIからは職業奉仕重視のメッセージがあまり聞こえて来ないような気がします。
 ポール・ハリスさん自身ロータリーの目的に関していろいろな事を言われていますが、ロータリーを人生道場として切磋琢磨の機会とするべきだとも言われていたと記憶しています。「人生の目的は何ですか」と、彼は言います。「それは学ぶことです」「何を学ぶのですか」「究極的にはいかにエゴを捨てていくか、それを学ぶことです」と続きます。例会等で、違う職業の人たちが切磋琢磨することも人生を学ぶことになります。このようにロータリーに期待することも、目的も、そこから受け取るもの、感動も、人それぞれだと思うのですが、やはり全体としての求心力は必要です。

 会社でも、例えば大手のメーカーでもすべてのラインを製造する時代から、得意とするもの、可能ならオンリー・ワンのものを出していくというのが今の時代ではないかと思います。ロータリーに関しても同じように、会員増強につなげるのには、差別化といいますか、大きな特長を出さないと求心力が湧いてこないのではないかと心配です。またその大きな特徴は各クラブでそれぞれに違った特徴でもいいのではないでしょうか。
 現象面から言えば、私どもの東京恵比寿ロータリーの特長は何と言っても、女性会員数が日本で一番多いということで、これが一応セールスポイントになって、男性会員の増強にも繋がっています。それから、東京広尾ロータリーでは、英語で例会をやっているのが大きな特徴です。 ただ、これだけでは求心力も限界があるわけでもう少し大きな目で、「ロータリーの、本当のオンリーワンの特長」に考えをはせる必要があります。
 ここで少し私どものクラブや地区での経験をご紹介させてください。
 私どもの恵比寿ロータリーはは48名でスタートいたしました。それが3代目、私の会長のときはもう100名位になっておりました。あっという間に増えたのは何でかなと考えると、当初はメンバーがちょっと声をかければすぐ入る方々がたくさんいたということだと思います。また、1995年当時は、女性を入れているクラブが少なかったかせいか、女性で入りたいという方がどんどん出てこられたという事情もあります。強力なメンバーが何人もいたのも増強には大きな強味でした。「あの人がいるクラブなら入ろう」というインセンティブになったのです。
 恵比寿ロータリーは歴史が浅く、来年やっと10年を迎えるのですが何か特別な活動をしていた時にはやはり皆盛り上がったし、新入会員も入ってきたように思います。女性会員が多いので、それを反映させたプログラムも多く行いました。たまたま私の会長のとき、「あなたの仕事、生き方が日本をよみがえらせる」という標語で、500名の女子大生を集めてフォーラムを行いました。女性メンバーの経歴、励ましの言葉を集めた小冊子を作りました。講演会、パネルディスカッションについで、会員全員でキャリアアップ相談会を各業種別に行いました。3~4時間のフォーラム中、席をたつ人もいず、質問も途中でカットする程熱気あふれたもので、会員増強にもつながりました。
 この時は参加者が2週間前になっても20人しか集まらず私は夢の中でもうなされましたけれど全員総力で最後の2週間で500名集めて皆がホットしました。会員の結束力に感動いたしました。外部者の大量の出席を促すのは時間と努力がいりますがやはり外へ向けての奉仕が本来の姿だと思います。
 次の年は、「企業は女性の感性で発展する」というテーマで、企業人の求める女性社員像と、現場で働く女性社員の意見をつけあわせたパネルディスカッションをしました。 そのほか、毎年麻薬撲滅に関するイベントをやっています。パネルディスカッションをやった時は元やくざの方も見えて、やくざの世界でも麻薬常習者だと出世が滞るというような話をされ、パネラーの警視庁の方も一生懸命メモをしておられました。 車椅子ダンスを毎年応援しています。あと女性の多いクラブらしい点としては、ダンス同好会があることでしょうか。

 地区の女性委員会では女性の親睦をかねたイベントを行っており、私が女性委員長のときに、「ボランティアのネットワークを生かそう、ロータリーを知る会」をいたしました。会員増強も「増やそう増やそう」という視点から、「ロータリーが役立とう」という視点に変えた方が増強につながるのではないかという発想です。女性委員会が企画し、増強退会防止、広報委員会に共催してもらい応援していただきました。これもセミナーみたいなものですけど、200名中、100名がロータリアン、100名が外部の方でした。できるだけボランティアを活発にしてらっしゃる方に来ていただきました。外部参加者の職業と、ボランティアの欄と両方のせた一覧表をつくってお渡ししました。ボランティアのネットワークを広げておけば、協力しあって活動も大きくすることができます。例えば出席者のやっていらっしゃる「奨学金会」にロータリーが寄附することができるし、「奨学金会」の方もロータリーの活動に参加していただけるかもしれません。海外での視察も互いに協力すれば費用の節約になります。その為にもまずロータリーを知っていただこうと、ロータリーの映画もお見せして、次に「ロータリーに入ってよかったと思うこと」というパネルディスカッションを行いました。その方たちに役に立ちながら、同時にロータリーのことも知っていただき、できれば会員になっていただこうというプログラムでした。実際、入会希望者もでました。 スペシャルオリンピクスの理事長をされている元首相夫人細川佳代子さん始めダイヤル・サービスの今野由梨さん、道路公団審議委員の川本裕子さんなどにそれぞれの社会貢献活動について熱く語っていただきました。それからお食事しながら名刺交換をしました。ともかくロータリーは奉仕団体ですので、もっと奉仕に関するデータや知識、やり方にたいする工夫の勉強が必要なのではないか、それに役立てたらと企画した次第です。

 地区同様、恵比寿ロータリークラブにも女性委員会というのがあったのですが今はなくなりました。女性の感性を生かすようなプログラムということでミニコンサートをやったり、ホテルの厨房に男性も入っていただいて、ケーキだとか、テーブルデコレーションとかやったり、それから紅茶の入れ方の講義などがあり会員の奥様方との交流の場ともなりました。でも男性委員会はないのに、なぜ女性委員会が必要なんですかという主張が多くて、今は廃止されております。
 私どもの恵比寿ロータリークラブは昨年、沢山退会者が出ました。それで今年からはゲストデーというのをつくって、そのときは講演料も気前よくだしてよい講演者を招き、入会を呼びかけたい人、家族を招いて増強と退会防止へつなげようとしております。

 今日のお話のテーマには、女性が入ったことでロータリーがどう変わったかというお話ができればぴったりなのですが、まだ調査はおこなわれていないと思います。理論的に言えば、ロータリー活動の奉仕の受け手としては、女性、そして子供が多くの場合対象となっているのですから、その受け手の気持ちがよくわかる女性がプログラムに関与したほうが、プログラムの質の向上につながるのは確かだと思います。
 それとまたアメリカ社会の例をみても、異分子、異なるものを取り込むことは活性化に繋がると思います。初めは移民を取り入れて、次に黒人を、そして女性を、社会のメインストリームに取り入れたことで、社会のバイタリティを維持しているのではないでしょうか。ですから、ロータリーに関しても、異分子たる女性が入ることで、ロータリーの活性化の起爆剤になるんではないかというふうに思っている次第です。なぜ起爆剤が必要なのかと言えば100年近くを経たロータリー運動のライフサイクルは決して若者期ではないからです。

 ポール・ハリスさんは1930年の段階で、ロータリーの運動のライフサイクルに触れて次のようなメッセージを発しています。シカゴのRI国際大会でのことです。「偉大な運動を研究すると、その発展は個人の発展と似ているように思われます。形成期は初期です。若い心は、感受性に富み、成熟すると落ち着いてきます。運動も年を経ると定型化するようになります。伝統が正当な判断力の行使を妨げます。先例を尊重するようになり、先例が必要以上に重要性を帯びてきます。価値もないし不合理なことが、今までそうであったから、という理由だけで継続されます。存在理由がかつてあったとしても今はないことが明らかでも、誰も先例をあえて破ろうとはしません。形式に精神が伴わないようになっているのです」
 私はライフサイクル的にみて、ロータリーは、今成熟期か或いは老年期なのではないかとすら思います。ただこれからずっと衰退するかというと、新しい起爆剤でまた新たなサイクルを作っていくことができると思います。企業も成熟して勢いが衰える、でも新製品の導入、分社化したり、あるいは小会社をつくって、そこでベンチャーをまた立ちあげどんどん活性化できるように、ロータリーも、やり方次第で幾らでも活性化できると思います。
 女性は、今まで日本の社会では中核にいませんでしたので、しがらみがない、先例にとらわれてないというか、先例を知らないというか、その分かえって、「ロータリーのこんなところおかしいんじゃない?」と気が付くのではないでしょうか。私が地区の女性委員長のとき委員全員の努力で女性委員会のサイトをネット上に作りそうした提案を呼びかけたんですが、あんまり反響はありませんでした。ただ女性会員の入会の歴史、ロータリーの女性活動に関する記事も載せましたので外の地区の方々も含め女性ロータリアンに関する講演をされる方のお役にたったようです。

 ここで数字を申しあげます。世界の女性会員数は、1998年8万人だったのが、前期末で14万人になっています。1.7倍ですね。 比率にして女性会員は1988年は全会員の7%だったのが、現在は11%までになってます。この間、ロータリーの総会員数は世界全体では1%だけ伸びですが女性は70%伸びていると言う事です。
 日本の女性会員数について言えば、1998年末には1,800人だったのが、2003年12月末で3,000人になっておりますので、1.6倍。この間、総会員数では16%減となっております。この間の女性会員比率は、1998年の1.45%から2003年末には2.8%にあがっています。ですから、増強するなら女性がターゲットというのは的を射た指摘です。ただ、単に人数を増やすための道具、あるいは会の財政状況を良くするための道具として女性を入れようというのは、女性にとってはしっくりこないわけで、ロータリー精神を理解して、ロータリアンとしてふさわしい方を男性でも女性でも入れるというのが本来のスタンスではないでしょうか。
 よく地方で講演をしますと、大都会は別かもしれませんが、地方ではそういう有資格の女性が少なくて、と言われるんですよね。でも今の世の中は、以前が10年かかったことが1年で起きているようなハイテンポで動いています。私は金融の世界におりましたけれど、本当に以前は10年かかった動きが今では1カ月の単位で起こるスピードだとすら思います。ですから、ロータリー精神に合った方ということで、お選びいただいたら若い方で現在は少し力不足としてもどんどん実力をつけてくるのではないかと思います。増強活動のときのターゲットとして、法人会、銀行主催の集まり、商工会議所、ボランティア運動をしていて経済的に余裕のある方などにあたられていると思います。やはりロータリーはあくまでも奉仕団体なので、奉仕の精神のある方に入会して頂きたいわけです。

 ここですこし「奉仕」についてお話しさせて下さい。日本人の個人からの寄附額は欧米諸国に比べて、著しく少ないと言われています。少ないというか、比べる数字自体がないというのが現状なようです。税制上の優遇が少ない、また、社会福祉とか奉仕は政府がやるべきという考えが根底にあることもその理由の一つです。宗教のちがいもあるかもしれません。そして奉仕をする先も共同募金、赤い羽根、緑の羽根等の政府関連のものが主で自分が信じる運動、自分の信条に基づいた寄付は少ないのが特徴です。奉加帳が回ってきてお寺や神社への寄進を多少やる、お参りする時にお賽銭は投げます。それからこれは寄付とは言いませんが、お葬式とか結婚式のときにお金を包んで持っていくという、互助的な色彩の強いお金の出し方はしますが赤の他人へはあまり出しません。NGOやボンティア団体も寄付で運動をまかなおうとする姿勢は強くないのです。日本の場合寄付にも横並び主義的な特徴があります。割り当てられると払うようで、寄付額も他人の出す額を基準に決めるようです。
 また日本人には他人に対してよい事をするのは隠匿を積むため、陰徳陽報という発想があり、ともかく良い事をしても他人に知ってもらう必要はない、もしろ黙っているくらいの方が良いという発想があります。だから別に表彰されなくていいし、それをマスコミに発表したりするとすぐ売名行為と悪口をいう人も出てきて、多額の寄付をしたことがかえって評判をおとす結果にすらなります。
 日米間の寄付およびボランティアの比較研究論文を読んでこれらの特徴に気付かされました。
 多くのロータリアンが社会にお世話になったからお返しをしたい、自分が恵まれていることに感謝して寄附をしたい、あるいはボランティアをしたいと言われます。それは必ずしもお世話になった人にしなくてもいい、誰か他の人にすればいい、そういう気持ちではないでしょうか。またその研究論文は日本人の「貧者の一燈」にもふれています。寄付額が価値を決めるのではない、気持ちを大切にします。寄付の額により特別扱いをしないのが例えば米国などとは違う点です。

 なぜこういうことを調べたかといいますと、米国で発生したロータリーの運動を知るには日本人の奉仕に関する特性も知らなくてはと思ったからです。日本人の77%は何らかの形で寄附をしているという調査結果もでていますけど、寄附額は少ない。それに良いことをすることが大事で、寄付をするのが大事で、その寄附がどう使われるとか、どんな効果をもたらすとか、寄附をする団体の運営状況がどうであるとか、自分たちで勝手に飲み食いに使っていないかどうか、そういうようなチェックには関心が薄いのだそうです。
 ちなみに米国に関して言えば、税金の控除がありますので、富裕層は多額の寄附をする。富裕層だけでなく借金している人もかなりの額の寄付をしようとする。それは宗教の教えから来ているようです。また多額の寄附をする人を表彰して運動を盛り上げる。寄附の対象は自分の信じる活動、例えば難民救済、それから動物愛護だとか、自分の信条に従って行う。そしてそのために団体選びを真剣に行い、そして調査を徹底し、お金が効果的に使われているかどうかを厳しくチェックしようとするそうです。

 ボランティア運動ですけども、これも寄附と同じで、日本は政府だのみで低調だったのですが、阪神・淡路大震災を機に、ボランティアが盛んになってきました。ボランティアは焦点を当てた運動が多いんじゃないかと思うんですね。国境なき医師団だとか、それから地雷撤去、フォーカスされたほうが自然と求心力もでやすい。この辺がロータリーの今後の運動を考えるとき考慮すべ点ではないでしょうか。参考になる面もあるし、これらの運動とどうかかわっていくのか、どう協力しあっていくのかもっと考えるべきでしょう。ロータリーは歴史が長い分、巨大であるだけに、古い部分を引きずっているのではないか、つまり組織論的にロータリーを見直す必要もあるのではないかと思います。
 ロータリーへの寄附額を調べてみましたところ、個人寄附は低調な日本人なのに、ことロータリーに関してはすごく優秀な成績です。日本のリータリー人口は世界の10分の1ですけど、ロータリー財団への寄附は総額の12%です。日本円で約20億円、寄附しています。1人当たりにすると、2002年-2003年で85ドル、これは米国の1人当たり58ドルをはるかに上回っております。日本独自の米山、これに2002年-2003年で16億寄附しております。それ以外に災害援助,クラブ独自の寄付を入れると、日本の常識を越えた非常に素晴らしい成績で、こと寄附集めに関してはロータリーの日本でのやり方は確実に成果をあげて、みんなのお役に立っていると言う事かと思います。

 私ども恵比寿クラブでは、寄附先の選定などに関してかなり批判が出まして、検討小委員会を設置して対外寄附要綱をつくりました。まず初めに寄付先を選考する際の手順を明確にし、透明性、公平性を持たせる仕組みにしました。それから寄附先は年限を最長3年と決めました。延長する場合は、新たに申請することになります。担当の委員会によるモニタリングを義務づけまして、年に1回例会で、可能な限り寄附先の人に来てもらうようにしました。なるべく会員が寄付の成果を実感できる機会を持つようにというのが狙いです。
 ロータリーは奉仕団体ですので、奉仕団体の名に恥じないように、会員が個人でやっているボランティア、家族がやっているボランティアの具体的にニーズも含めた情報のデータベース化を検討小委員会はその答申で提唱しました。そうすれば、ロータリアン個人の寄付先の開拓にもなるし、クラブとして寄附を選ぶときに、より、豊かな選択肢の中から選ぶことが出来るからです。

 退会防止に関連してロータリーに対する不満の声を聞くと、まず会費の問題、それから経費が、固定費が高い問題がでてきます。食事代がかかる、だから東京の都心ですと、大体5,000円近くのメーキャップ・フィーになるかと思うんですね。また組織の維持のための時間がかかって、本当に第一線で活躍している人は例会の出席もままならず、フルに活動できない。日本を担っているような人はロータリアンになれないのか?人間関係、特にお金にからむトラブルも退会理由にあげられます。役員の決め方、地区への役員の決め方に関して透明性の欠如、あるいはガバナンスの問題が指摘されます。寄附先の決定にしろ、先例主義とか、なあなあ主義というんですか、そういうスタイルで会が運営されているのではないか、それから日本のロータリークラブから本部へのインプットが十分にされているのか等が話題になります。やはりこういう面で女性のフレッシュな感覚で退会防止に繋がるような改革が出来ればと考えています。

 しかし、ボランティアや奉仕運動自体は、今後ますます盛んになると思います。政府は財源も限られておりますし、急速な高齢化で地域での助け合いとか、ボランティアなしにはもう乗り切れない状況になっていると思うんですね、またい福祉のニーズが余りにも多様化しているので、公のサービスでは対応していけないこと、個人も生き甲斐を求めて、ボランティアは普通の人が仕事をもっている人ももっていない人も普通にやっていく運動になっていくと思います。

 私自身はロータリーに入ってよかったと思っております。 自分一人ではなかなか寄附やボランティアはできないけど、みんなで声をかけ合って、みんなで一緒にやったら寄付もしやすいし、忙しい忙しい、余計なことはやりたくないと言っても、仲間に引きずられて活動にも参加するようになります。ロータリーに入って、この年までこんな思いをしたことないっていう素晴らしいい経験も随分させてもらいましたし、こんな素晴らしい人はいないという人にも会いました。お家に呼ばれて、おもてなしの心っていうのを本当に初めて見る気がしましたし、それから、何でも他の人のために一生懸命やる人にも初めて会いました。女性フォーラムのとき、2週間で500人集めたあの感激といいますか、結束力を感じたのも得がたい経験です。勿論男性の方から学ぶことも多いんですけど、どちらかというと、私ぐらいの年の場合は、女性で働いている方が少なかったので、女性に会えてすごくよかったなと思います。女性の場合は、ロールモデル的な人にあう機会がまだ少ないのでロータリーは貴重です。

 私は海外でよくロータリアンの特権を感じます。まず根本的に見ず知らずの人をロータリアンというだけで受け入れてくださり、自分と関係のない職業の方とお話が出来るのが何よりです。発祥の地のロータリーワンにも2度行きましてすぐお友達もできました。それからカリブ海に浮かぶ小さなバハマというところで、探り当ててロータリークラブに行ったら、隣に座った方が、私が午後訪問する予定の弁護士事務所の人だったりしました。ネパールでは、政府の高官の方もロータリアンでしたし、ロンドンの大使館街では集まったのが10人ぐらいだったので、これでやっていけるのかなと思ったら、大使館街のせいか知りませんけど、8カ国の方がいて会話自体が楽しいい、まさにクラブライフというのはこういうことを言うのかと感じ入った次第です。小さくてもそれなりに運営の仕方があるのだなと思いました。

 また、大坂での国際大会の合同礼拝、宗教戦争の感すらあるこの時代に、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教、ヒンズー教の方々が一同に会して合同礼拝をするというのは、やっぱりロータリーならでのことで、大したものだと思います。 私自身、奉仕の真髄がわかっているとは思いませんけれど、他人の為とはいえ、頭を下げて、お金をだして下さいとか、こういうことやって下さいというのが、本当は嫌なのですね。だけれども、不思議なことに、そうすると時々思いがけないことが起こったりします。頼んだ方も頼まれた方もびっくりするような意外な展開になったりします。
 エンパワーメントという言葉があります。参加者同士がお互いに啓発しながら社会性を深めて自己実現させていくと、これがボランティアの真髄かもしれません。私自身他人の問題を自分の問題としてまだ引き受けておりませんので、大きなことは言えないのですが、ただ子供にはなるべく小さい段階から、自分のためだけ、親や他人からして貰うだけじゃなくて、他の人のためにしてあげる、お金をあげる、エネルギーを費やすという回路を作っておいたほうが絶対いいと思います。青少年問題の歯止めにもなるでしょう。先ほど御紹介にありました私の本「金銭教育―小遣いから資産家の二世教育まで」でボランティアと奉仕のために章を設けて書いたのも本当にそう信じているからです。

 私は寄付やボランティアに関する情報をよく海外での会議で得ます。特に資産家のための資金運用やファミリー企業の会議にでると、かならず寄付のことが話題になりますし、その道の専門家も招聘されます。例えばベンチャー・フィランソロピーーというのが2000年ぐらいから言われだしています。フィランソロピーというのは慈善です。慈善運動、寄附、ボランティアも単にお金とか労力だけじゃなくて、ベンチャー精神をそこに応用しなければいけないという考えです。つまり、ベンチャー・キャピタリストの手法、才能、専門性を活かし、戦略的にお金を使って、寄附先に成果を説明する責任を負わせるなどを推奨します。 ものを差し上げるのにもノウハウがいるのです。いいことをするんだからやり方などどうでもいい、という訳にはいかないのです。受け手の心が傷つくやり方になってはいけません。それから、受け手に依存心を芽生えさせるようなやり方も拙いわけです。寄付も継続性がなければいけない。皆の興味をどう繋いでいくかもノウハウです。
 ロータリーの奉仕活動でもベンチャー・フィランソロピー的な創造的な奉仕のやり方を工夫していかなくてはいけないんだなあと思っておりますし、またこれを、家族と一緒にやってみたらどうでしょう。ロータリーの会合のときに家族に来てもらうのもいいけれど、麻薬撲滅のポスター配るとき、子供も一緒に連れていく、あるいは家で毎年少額でも、「どこに寄附しようか」と皆で相談して決めるとか、そんな体験が、必要じゃないでしょうか。実際そうすることで、家族同士のコミュニケーションが飛躍的によくなった実例も発表もされております。その理由はわからないんですけど、多分、人は他の人のことを考えているとき、心の垣根が少し低くなるんじゃないかと思うんですね。

 私どもは今、不安な時代に差しかかって、ちょっと脇をゆるめるとあっという間に刺される時代です。ましてや自分の正直な気持ちなんか言ったらどう利用されるかわからない、と口を閉ざすような時代になってきたかと思います。そういう時代だからこそ、善意を前提としたロータリーの集まりは貴重です。じゃあ何でロータリーが増強に苦しむのかと言えば、不況とか経済的な理由だけではないように思います。変革を検討すべきではないでしょうか。今後のロータリーの展開のオプションを数多く検討すべきではないでしょうか。例えば、他の団体への寄付に特化する可能性、もっと各クラブが規律的にも自由を得て、独自性を発揮できるような展開にする等の可能性はないものでしょうか。 そして、多分ロータリーの変革期には、女性が新しい時代にマッチした感覚で、大きな役割を果たしていくことができるかと思います。私どもは、いろいろ政府を批判します。哲学がない、官僚主義だ、横並び主義、ディスクロージャー不足、先例主義と、日本からの独自のメッセージが発信されてないと言います。でも、ロータリー運動の中でも私たち自身、同じことをしているのにふと気付きます。改革は足元から心がけたいと思います。 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

(2004年7月31日 ホテルアソシア静岡ターミナルにて)

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